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砂川事件判決はどのように読まれているか

id:oktnzmさんが

「砂川判決に話を戻すと判例としての統治行為論は事案や読み手の裁量によって適用され方が異なると思われるが、実務上は1で述べたように選挙制度にも一般化された形で適用されている(20150619訂正)。よって客観的には日米安保には限定されていないのは明らかだろう。」

とおっしゃっているので*1、「客観的」の語義はさておいて、第三者にはどのように読まれているのかを確認できるようにするための、自分用のメモ。ソースは

www.tv-asahi.co.jp

 

このアンケート「砂川事件」で機械的に検索しただけ。

 

東京経済大学現代法学部教授・加藤一彦氏
砂川最高裁判所判決は、集団的自衛権の発生根拠とはなり得ない。この判決は、駐留米軍が憲法9条2項に定める「戦力」に該当しないことを明らかに判決です。判決文に出てくる「国家固有の自衛権」は、個別的自衛権のみを指します。

神戸大学准教授・木下昌彦氏
千葉勝美現最高裁判事は、「判決による司法判断は、全て具体的な事実を前提にしてそれに法を適用して事件を処理するために、更にはそれに必要な限度で法令解釈を展開するものである」と重要判決の補足意見のなかで論じている(最判平成24年12月7日刑集第66巻12号1337頁)。砂川事件判決は我が国の集団的自衛権が争点となった事案では全くなく、集団的自衛権について何ら憲法解釈をおこなっていないことは通常の判決の読み方からは明らかである。

上智大学法学部准教授・小島慎司氏
日米安保条約については、砂川事件最高裁も1960年の岸信介首相も、個別的自衛権を前提としていると述べてきたにもかかわらず、日米安保体制と集団的自衛権が順接につながるかのような誤解が見られると思われる。

大阪大学法学研究科教授・高田篤氏
アメリカ軍は同項の規律対象ではない、とした砂川事件最高裁判決を、最高裁が集団的自衛権を正面から認めた判決として持ち出すことは、全くの的外れであり、まともに国民を説得しようとする気のない不誠実な対応です。

北海学園大学法学部教授・館田晶子氏
政府が度々言及する72年答弁や砂川判決も集団的自衛権を容認するものではなく、この点を指摘する批判に政府は説得的な見解を示せていません。

一橋大学大学院法学研究科教授・阪口正二郎氏
砂川事件判決を根拠を集団的自衛権の行使を正当化することも困難である。もともと、砂川事件で問題になったのは、駐留米軍が憲法9条2項の禁ずる『戦力』に該当するかどうかであって、日米安全保障条約は日本の個別的自衛権とアメリカの集団的自衛権を組み合わせて日本を防衛するものであり、日本が集団的自衛権を行使しうるかどうかは争点となっていないし、最高裁もその点については判断していない。こうした砂川事件判決から日本が集団的自衛権を行使しうるのとの結論を引き出すことはできない。また、それができていれば、政府はこれまで苦労しなかったはずである。

名古屋大学大学院法学研究科教授・愛敬浩二氏

砂川事件最高裁判決については、米国による政治的圧力と、最高裁長官を含めた日本政府側の「迎合」が明らかにされている。今回の安保法制も、国会審議の前に新ガイドラインを策定し、安倍首相が米議会で期限を示して法整備を約束するなど、対米従属の姿勢が顕著である。安保法制が整備されれば、米国の要請に対して、これまでの政府のように「憲法上、協力できない」とはいえず、「政策上、協力したくない」と言わなければならない政府が、独立国の憲法裁判として恥ずべき経緯と内容の砂川事件最高裁判決を持ち上げるのは、憂慮すべき事態である。

國學院大學法学部教授・平地秀哉氏
現在の政府与党は、集団的自衛権の有無が争点とはなっていない砂川事件最高裁判決について、集団的自衛権を認めた判例として援用するなど、判例の読み方などの法解釈の作法を踏まえているものとはおよそいい難い。

関西大学法学部教授・高作正博氏
集団的自衛権の行使容認の根拠として、(1)砂川事件最高裁判決と、(2)1972年10月14日の政府見解とが持ち出されているが、どちらも意図的な曲解に基づくものであり、説得力を持たない。

山梨学院大学法学部准教授・鈴木敦氏
政府与党は、集団的自衛権の行使が憲法上認められるとする根拠に、1959年の砂川事件最高裁判決を挙げている。しかし、同判決の内容が集団的自衛権を論じたものでないことは明らかであり、このことは判決後に政府が憲法解釈を改めなかった事実によっても裏づけられるものであるから、判決は閣議決定の論拠には適していないとせざるをえない。

千葉大学大学院専門法務研究科教授・巻美矢紀氏
なお、砂川事件最高裁判決にもとづいて集団的自衛権行使を合憲とする議論は、憲法の専門家だけでなく、そもそも法の解釈を真面目に行おうとする者からすれば、曲解と言わざるをえないことを申し添えておく。

四天王寺大学経営学部准教授・春名麻季氏
内閣が合憲の根拠とあげる砂川事件判決は、日米安保条約憲法問題であり、集団的自衛権が直接争われているわけではない。最高裁は、砂川事件に限らず、9条解釈については、明言を避けている。したがって、最高裁判例では、内閣がいうような集団的自衛権行使容認についての憲法判断はいまだ示されていない。

北海道大学法学研究科特任教授・岡田信弘氏
1.砂川最高裁判決(それを前提にした72年政府見解)との論理的整合性と2.安保をめぐる国際環境の変化の2つであると思われるが、いずれにも「法的な論理もしくは議論」として妥当なものとはいえない。1.については、この判決から、なぜ、政府・与党(特に高村氏)のように読めるのか分からない。「判決の射程」の理解の仕方があまりにも政治的であって法的ではない。

 

ついでに、参考となるべき判例の補足意見も。

 

横田基地夜間飛行差止等請求事件( 最判平成19年5月29日 集民224号391頁)における上田豊三裁判官と堀籠幸男裁判官の補足意見

「しかし,昭和56年大法廷判決のうち上記の一般法理だけが「判例」としての先例的意義・価値を持つわけではない。…「空港周辺の住民が同空港を離着陸する航空機による騒音等により被る損害の賠償請求のうち,事実審の口頭弁論終結日の翌日以降のものは,権利保護の要件を欠き,不適法である」とする判断は,当該具体的事案に前記の一般法理を当てはめて当該事件を解決した最も重要な事例判断から抽出される命題,いわゆる結論命題であり,この部分こそ狭義の「判例」として先例的な意義・価値を有し,拘束力を持つものというべきである」

 

世田谷国公法事件(最判平成24年12月7日刑集66巻12号1337頁)における千葉勝美裁判官の補足意見
猿払事件大法廷判決は…本件罰則規定の禁止する「政治的行為」に限定を付さないという法令解釈を示
しているようにも読めなくはない。しかしながら,判決による司法判断は,全て具体的な事実を前提にしてそれに法を適用して事件を処理するために,更にはそれに必要な限度で法令解釈を展開するものであり,常に採用する法理論ないし解釈の全体像を示しているとは限らない。」